FUND ANALYSIS / POLICY DATA
日銀のETF売却は簿価で年3,300億円|37兆円を売り切るのに何年かかるか
本記事は情報提供を目的とした解説であり、特定の投資信託・金融商品の購入を勧誘するものではありません。投資信託・株式・FX等は元本割れのおそれがあります。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。制度・数値は執筆時点のもので、最新情報は日本銀行など一次情報をご確認ください。
日本銀行は2025年9月19日の金融政策決定会合で、保有するETFとJ-REITを市場で売却する方針を決めました。ペースはETFが簿価で年3,300億円程度、J-REITが簿価で年50億円程度です。ETFの簿価残高は37兆1,861億円とされ、単純に割ると約113年。売却額は市場全体の売買代金の0.05%程度に抑えた設計。決定の1枚資料から、ペースの決め方と「100年以上」の計算の中身を並べます。

決まった売却ペースは2つの資産で別の数字
決定の資料「ETF等の処分に関する決定」には、年間の売却ペースが資産ごとに簿価と時価の2本で書かれています。
| 資産 | 簿価 | 時価 | 市場の売買代金に占める割合 |
|---|---|---|---|
| ETF | 3,300億円程度 | 6,200億円程度 | 0.05%程度 |
| J-REIT | 50億円程度 | 55億円程度 | 0.05%程度 |
| (参考)金融機関から買入れた株式の実績 | 1,500億円程度 | 6,200億円程度 | 0.05%程度 |
ETFの時価6,200億円は、参考欄の「金融機関から買入れた株式」の売却実績と同じ金額です。資料は、この株式の処分を2025年7月に完了したと書き、ETFも「同程度の規模で市場へ売却」すると説明しています。時価で前例と揃え、売買代金に占める割合も0.05%程度に合わせた設計です。
簿価と時価の差にも情報があります。ETFは時価6,200億円÷簿価3,300億円で約1.88倍。買い入れた時より大きく値上がりしている、ということ。
37兆1,861億円÷3,300億円は約113年
大和総研のレポート(2025年9月22日)は、日銀が保有するETFの簿価残高を37兆1,861億円、J-REITを6,550億円としています。決定されたペースで割ると、次の表のとおり。
| 資産 | 簿価残高 | 年間ペース(簿価) | 単純計算の年数 |
|---|---|---|---|
| ETF | 37兆1,861億円 | 3,300億円程度 | 約113年 |
| J-REIT | 6,550億円 | 50億円程度 | 131年 |
ETFもJ-REITも、100年を超えます。総裁会見で処分に100年以上かかる趣旨の説明があったと報じられたのは、この割り算の結果と合う。ただし、ペースが一定のまま続くこと、途中で見直しがないことを置いた単純計算です。

ペースを変えられる条件は2つ書かれている
資料には、決めたペースを固定しないための条文が2つあります。
- 売却ペースのもとで、市場の状況に応じ、売却額の一時的な調整・停止を行うことができる
- 基本方針や今後の売却の経験を踏まえ、金融政策決定会合において、売却ペースを見直すことがありうる
前者は相場が荒れたときのブレーキ、後者はペースそのものの変更です。113年という数字は、どちらも使わなかった場合の上限側の目安と読むのが妥当です。開始時期について資料は「所要の準備が整い次第、処分を開始する予定」としています。
基本方針の欄には、日本銀行の損失発生を極力回避すること、市場に攪乱的な影響を与えることを極力回避することが並びます。売却は各銘柄の保有割合におおむね比例するかたちで、時期を分散して行う、という書き方。

年3,300億円は個人の資金の流れと比べて小さいか
比較の物差しを1つ置きます。資産運用業協会の統計では、公募株式投信への純資金流入は2026年1〜8月の累計で17兆2,551億円でした(当ブログの投信残高364兆円の記事で扱った数字)。日銀のETF売却の時価6,200億円程度は、その約3.6%にあたります。
対象も性格も違う数字なので、単純に相殺されるものではありません。ETFの売却は東証で毎日売買される株式市場の需給に、投信への流入は個人の積立や一括の購入に、それぞれ現れます。言えるのは、年あたりの金額で見ると、売却は個人の投信への流入の数%の規模にとどまる、という点までです。

この数字から何を読み、何を読まないか
読めるのは、売却のペースが前例の株式処分と同じ規模に揃えられ、市場の売買代金の0.05%程度に抑えられていること。そして簿価残高をそのペースで割ると100年を超えることです。
読めないこともあります。売却が個別の株価や日経平均・TOPIXの水準にどれだけ影響するかは、この資料からは分かりません。保有割合に比例して売るとされていても、どのETFを、どの日に、どれだけ売ったかは別の公表を待つ必要があります。投資信託やETFを持つ側の判断材料としては、「急いで売る設計ではない」という事実を押さえておく程度が適切です。
よくある質問
- 日銀はETFを年間いくら売るのですか?
- 2025年9月19日の決定で、ETFは簿価で年3,300億円程度(時価で6,200億円程度)、J-REITは簿価で年50億円程度(時価で55億円程度)とされました。市場全体の売買代金の0.05%程度です。
- 売り切るのに何年かかりますか?
- ETFの簿価残高37兆1,861億円を年3,300億円で割ると約113年です。ペースが一定で見直しがない場合の単純計算で、実際には調整・停止や見直しがありえます。
- 売却のペースは変わることがありますか?
- あります。市場の状況に応じた一時的な調整・停止と、金融政策決定会合での売却ペースの見直しの2つが、決定の資料に書かれています。
- J-REITも売却されるのですか?
- はい。J-REITは簿価で年50億円程度です。簿価残高6,550億円で割ると131年になります。