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インデックスなのに指数と一致しない|トラッキングエラーを数字で読む

指数分析公開:2026年9月8日最終更新:2026年9月8日文:蓮

本記事は情報提供を目的とした解説であり、特定の投資信託・金融商品の購入を勧誘するものではありません。投資信託・株式・FX等は元本割れのおそれがあります。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。制度・税制・費用の数値は執筆時点のもので、最新情報は金融庁・投資信託協会など一次情報をご確認ください。

結論から言うと、インデックスファンドの値動きは指数とぴったり一致せず、その差は下方向とは限りません。コストを引かれる以上は指数に負けるはずだ、という理解は直感的ですが、実績値はそう単純ではありません。この記事では、実在するファンドの交付運用報告書を1本開き、騰落率とベンチマークの差、そして差し引かれた費用の内訳を、数字のまま並べて確認します。

トラッキングエラーとは何ですか?

資産運用業協会の用語集は、トラッキングエラーを次のように定義しています。パッシブ運用においてファンドやポートフォリオの値動きが、ベンチマークとしている指数の値動きから乖離すること。

定義に「下回る」とは書かれていません。乖離であって、劣後ではありません。ここが実務上の分岐点になります。

指数への連動をうたう商品でも、指数そのものを買うことはできません。運用会社は現物の株式を組み入れて指数を再現します。その過程で費用が発生し、売買のタイミングのずれも避けられません。結果として差が出ます。

実例:オルカン第8期は指数を0.2%上回った

具体的な数字で見ます。対象はeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)、愛称オルカン。第8期の作成対象期間は2025年4月26日から2026年4月27日、決算日は2026年4月27日です。

交付運用報告書の記載はこうです。基準価額は第8期首24,270円から第8期末35,924円へ。騰落率は48.0%。既払分配金は0円。純資産総額は11,287,774百万円です。

そして「ベンチマークとの差異」の欄に、こう書かれています。ファンドの騰落率は、ベンチマークの騰落率(47.8%)を0.2%上回りました。

ベンチマークはMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)です。連動を目指す指数を、実績で0.2ポイント上回った期だった、ということになります。

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)第8期の実績
項目数値
対象期間2025年4月26日〜2026年4月27日
基準価額(期首→期末)24,270円 → 35,924円
ファンドの騰落率48.0%
ベンチマークの騰落率47.8%
差0.2% 上回り
分配金合計0円
純資産総額11,287,774百万円

組入ファンド別の騰落率も同じ報告書に載っています。外国株式インデックスマザーファンドが45.7%で組入比率83.0%、新興国株式インデックスマザーファンドが67.7%で12.0%、日本株式インデックスマザーファンドが47.0%で5.0%です。

コストは0.085%。それでも上回っています

費用が引かれていないわけではありません。同じ報告書の「1万口当たりの費用明細」を開くと、内訳まで数字で出ています。

1万口当たりの費用明細(第8期・期中の平均基準価額30,894円)
項目金額比率
信託報酬18円0.058%
(うち投信会社)6円0.019%
(うち販売会社)6円0.019%
(うち受託会社)6円0.019%
売買委託手数料1円0.003%
有価証券取引税3円0.011%
その他費用4円0.013%
合計26円0.085%

その他費用の内訳は、保管費用3円、監査費用0円、その他1円です。参考情報として掲載された総経費率は年率0.07%。募集手数料・売買委託手数料・有価証券取引税を原則含まない値です。

つまり0.085%を負担しながら、指数を0.2%上回った期でした。コストを払うことと指数を下回ることは、同じ意味ではありません。

断定を避けたい点:この0.2%がなぜ生じたのか、第8期の交付運用報告書は要因の内訳を示していません。配当の課税上の扱い、先物の活用、組入銘柄の抽出方法など、差を生む要因は複数考えられますが、この資料だけで原因を特定することはできません。数字は確認できても、理由は資料に書かれた範囲までです。

乖離を自分で確かめる3ステップ

手順は短く済みます。確認先は運用報告書1本です。

  1. 交付運用報告書を開く。運用会社のサイトでファンド名を検索し、詳細ページから閲覧・ダウンロードします。
  2. 「運用経過」の「ベンチマークとの差異」を読む。ファンドの騰落率とベンチマークの騰落率、その差が文章で明記されています。
  3. 「1万口当たりの費用明細」で合計と比率を見る。期中の平均基準価額も同じページにあるため、負担率を自分で検算できます。

目論見書の信託報酬は事前の予定値です。実際に何が起きたかは、期が終わった後の運用報告書にしかありません。コストの読み方そのものは信託報酬と実質コストの見方3つで整理しています。

1期の数字だけで商品を評価することはできません。差の向きは期によって変わります。複数期を並べて初めて、その乖離が安定しているのかどうかが見えてきます。

よくある質問(FAQ)

Q. トラッキングエラーとは何ですか?
資産運用業協会の用語集では、パッシブ運用においてファンドやポートフォリオの値動きが、ベンチマークとしている指数の値動きから乖離することと定義されています。乖離の向きは下方向とは限りません。
Q. インデックスファンドが指数を上回ることはありますか?
あります。eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)第8期の交付運用報告書は、騰落率48.0%がベンチマークの47.8%を0.2%上回ったと記載しています。
Q. 乖離はどこで確認できますか?
交付運用報告書の「運用経過」にある「ベンチマークとの差異」の欄です。費用は同じ報告書の「1万口当たりの費用明細」で確認できます。
Q. コストを払っているのに指数を上回れるのはなぜですか?
費用は必ず差し引かれますが、指数との差を生む要因はほかにも複数あります。第8期の運用報告書は0.2%の内訳までは示していないため、原因は断定できません。
参考にした一次情報・公的資料
蓮
蓮
QuantumLeap データリサーチ担当

AI・データドリブン投資のリサーチを担当。運用コストやオルタナティブデータの動向を、テクノロジーの視点で中立的に解説します。数値は執筆時点の公式情報に基づき、投資判断は自己責任でお願いします。

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