FUND ANALYSIS / MARKET DATA
ETFの気配は誰が出しているのか|マーケットメイカーの義務は立会時間の80%と片側3,000万円
本記事は情報提供を目的とした解説であり、特定の投資信託・ETF・金融商品の購入を勧誘するものではありません。投資信託・ETF・株式・FX等は元本割れのおそれがあります。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。制度・数値は執筆時点のもので、最新情報は日本取引所グループなど一次情報をご確認ください。
東京証券取引所は2018年7月2日、ETF市場にマーケットメイク制度を導入しました。指定を受けたマーケットメイカーは、立会時間の80%以上で、決められたスプレッドの内側に決められた数量の売り買いの注文を出し続ける義務を負います。日経225やTOPIXなどに連動するETFなら、片側3,000万円以上を20bps(0.20%)もしくは2ticks以内。この記事では、東証の制度資料「ETF市場におけるマーケットメイク制度の取扱い」(2026年4月・Ver.5.0)から、義務と報酬の数字を書き出しました。

マーケットメイカーは何を約束しているのか
制度の概要ページによると、東証は申請をもとに銘柄ごとにマーケットメイカーを指定し、指定を受けた業者は気配提示義務を果たすことで報酬(インセンティブ)を受け取る仕組みです。運用会社が独自に義務と報酬を設定できる「スポンサード・マーケットメイク制度」もあわせて導入されています。
制度資料が定める義務は、次の3つです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 気配提示銘柄数 | レバレッジ・インバース型を除くETFのうち5銘柄以上 |
| 気配提示時間 | 立会内の80%以上の時間帯(特別気配・売買停止などの時間は計測から除外) |
| スプレッド・気配提示数量 | 銘柄タイプ(A〜D)ごとに最大スプレッドと最低数量を指定 |
気配提示時間は、気配を出していた時間を気配を出せた時間で割った比率で、取引システムのタイムスタンプをマイクロ秒単位で累積して月ごとに判定されます。80%を下回れば、その月の義務は未達という扱いです。
スプレッドと数量は4つのタイプで違う
同じ資料の「スプレッド・気配提示数量」の表を書き写しました。スプレッドの上限は「bps」と「ticks」のいずれか広い方です。
| タイプ | 主な対象 | 片側の数量 | スプレッド上限 |
|---|---|---|---|
| A | 日経225・TOPIX・JPX日経400・JPXプライム150を対象指数とするETF(レバレッジ・インバース型を除く) | 3,000万円以上 | 20bps もしくは 2ticks |
| B | その他国内株、国内のREIT・債券に連動するETF、国内中心のアクティブ運用型ETFなど | 1,000万円以上 | 50bps もしくは 3ticks |
| C | 海外指数・コモディティETF、海外資産中心のアクティブ運用型ETFなど | 500万円以上 | 50bps もしくは 3ticks |
| D | 個別に指定したETF | 500万円以上 | 80bps もしくは 4ticks |
資料には「日経225やTOPIXなど比較的ヘッジのしやすいETFについては、スプレッドや数量を厳しく設定」とあります。基準価額3,000円のETFに当てはめると、20bpsは6円、50bpsは15円、80bpsは24円の幅になります(bpsだけで計算した目安。実際はticksとの広い方)。

報酬は売買代金の0.1〜0.2bps
義務を満たした業者には、約定金額に比例したインセンティブが支払われます。単価は銘柄の立会内の日次売買代金で5段階に分かれ、売買の少ない銘柄ほど単価は高めです。
| ティアー | 立会内の日次売買代金 | 単価 | 板寄せ時・マーケットメイカー同士の約定 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ | 1億円未満(新規上場銘柄) | 0.2bps | 0.5bps |
| Ⅱ | 1億円〜5億円 | 0.2bps | 0.25bps |
| Ⅲ | 5億円〜10億円 | 0.1bps | 0.15bps |
| Ⅳ | 10億円〜50億円 | 0.1bps | 0.1bps |
| Ⅴ | 50億円〜 | 付与なし(レバレッジ・インバース型も常にⅤ扱い) | |
資料の注記では、日次売買代金が5億円未満の銘柄まではマーケットメイカーが「実質的に無料で売買することが出来る」とされています。1億円の約定に0.2bpsなら2万円。報酬の大きさより、手数料負担をなくして参加を促す設計と読めます。アクセス料や仮想サーバ費用の一部免除が付く点も、同じ狙いの一部です。

Version2.0は指数ごとに上乗せの条件を決める
通常の制度に加えて、特定の指数に連動するETFには「Version2.0」の条件が設定されています。運用会社と東証が報酬を出し合い、より厳しい義務を課す仕組みです。2025年7月からの資料では、JPXプライム150指数は「1億円/2ticks or 20bps」で月額30万円/社(上位2社)、TOPIX-17業種の各指数は「3,000万円/3ticks or 25bps」で月額15万円/社(上位1社)でした。
2026年2月からは「JPXスタートアップ急成長100指数」が対象に加わり、「1,000万円/3ticks or 40bps」で月額15万円/社(上位2社)。最低気配提示時間は全銘柄80%です。各条件は原則6か月の設定で、定期的に見直すと書かれています。2026年4月からは、大引けのクロージング・オークションや前場の寄付だけを対象にしたスポンサー条件も設定できるようになりました。

この制度から何を読み、何を読まないか
読めるのは、マーケットメイカーが付いている銘柄には「片側いくら以上・幅いくら以内」の気配が立会時間の大半で出ている、という最低ラインです。売買代金の小さいETFを選ぶときは、東証が公表している「マーケットメイカーの参入状況」で、その銘柄に何社が参入しているかを先に確かめる、という順番が取れるはずです。
読めないこともあります。義務は月次の80%で判定されるので、残りの時間帯や急変時に気配が薄くなることはありえます。また、市場価格はETFの適正価格の目安である推定純資産額(インディカティブNAV)と常に一致するわけではありません。スプレッドの上限は「最大でもこの幅」という約束で、取引コストがゼロになるわけではない点も同じです。
よくある質問
- ETFのマーケットメイク制度はいつ始まりましたか?
- 東京証券取引所が2018年7月2日に導入しました。運用会社が条件を設定するスポンサード・マーケットメイク制度も同時に導入されています。
- マーケットメイカーは常に気配を出していますか?
- 義務は立会内の80%以上の時間帯です。気配提示時間は月次で判定され、特別気配や売買停止の時間は計測対象から除かれる決まりです。
- 日経225連動ETFのスプレッドの上限はどれくらいですか?
- タイプAに当たり、片側3,000万円以上の注文を20bpsもしくは2ticks以内(いずれか広い方)で提示する義務があります。
- マーケットメイカーへの報酬は投資家が負担しますか?
- 東証の制度の報酬は取引所が設定・支払い、スポンサード制度では運用会社が支出する仕組みです。Version2.0の例では、JPXプライム150について運用会社と東証が1銘柄あたり30万円ずつ支出すると書かれています。